(2025/6/20作成)
筋トレに取り組んでいるのに、なぜか腰が痛くなる。
トレーニングを頑張るほどに腰の違和感が強くなっていく——。
その痛み、筋肉ではなく“フォーム”や“身体の使い方”に問題があるかもしれません。
本記事では、看護師歴10年以上・パーソナルトレーナー資格を持つ筆者が、医療と運動の両視点から「腰を痛める筋トレあるある5選」を科学的根拠を交えて詳しく解説します。
スクワットで腰を反らせすぎている

▶️ なぜ痛めるのか?
スクワットでは、骨盤を前傾させてお尻を後方へ突き出すフォームが「正しい」とされがちです。
しかし、それを過剰に意識しすぎると、腰椎(特にL4〜L5)に過度な伸展(反り)が起こり、椎間関節にストレスがかかります。
▶️ 科学的根拠
研究では、腰椎の過伸展は脊柱起立筋の緊張を強め、椎間板への圧力を高めることが示されています(McGill, 2007)。
これが慢性的な腰痛や急性の筋・筋膜性腰痛のリスクになります。
▶️ 対処法
骨盤のニュートラルポジションを維持したまま、腹圧を高めて動作すること。
腹横筋の活性化やドローインの意識が重要です。
デッドリフトで背中が丸まっている

▶️ なぜ痛めるのか?
高重量を扱う代表的種目であるデッドリフトは、背骨全体のアライメント維持が不可欠です。
背中が丸まると、腰椎屈曲により椎間板の前方に圧が集中し、椎間板ヘルニアの原因になります。
▶️ 科学的根拠
Stuart McGillらの研究では、背中を丸めた状態でのリフティングは椎間板の前方移動を促進し、髄核の後方突出(=ヘルニア)を起こしやすいことが確認されています。
▶️ 対処法
腰椎の自然なカーブ(前弯)を維持するために、軽い重量からフォームを徹底。動画でセルフチェックや専門家の指導を受けることも有効です。
腹筋で反動を使っている

▶️ なぜ痛めるのか?
クランチやシットアップなどの腹筋運動で勢いよく起き上がると、腹筋ではなく腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)で引き上げる動作になりがちです。
腸腰筋は腰椎に直接付着しているため、反動によって腰椎を強く引っ張る形になり、痛みを引き起こします。
▶️ 科学的根拠
EMG(筋電図)分析では、フォームが崩れると腹直筋よりも腸腰筋の活動が優位になることが確認されています(Axler & McGill, 1997)。
▶️ 対処法
反動を使わず、胸郭を丸める意識で腹筋群を使うこと。
ゆっくりとしたコントロール動作が重要です。
レッグレイズで腰が浮く

▶️ なぜ痛めるのか?
仰向けで足を上下するレッグレイズは、腹筋を鍛える良い種目ですが、腰が床から浮くと腰椎が反りすぎてしまい、椎間関節や靭帯にストレスがかかります。
▶️ 科学的根拠
腰椎の過伸展時には、椎間板圧が増加し、腰部の後方構造(棘間靭帯、黄色靭帯など)へのストレスが大きくなることが報告されています(Callaghan & McGill, 2001)。
▶️ 対処法
常に腰を床に押し付けるように腹圧を高め、可動域を無理に広げないこと。
骨盤後傾を維持しながら行うのがポイントです。
プランクでお尻が下がっている

▶️ なぜ痛めるのか?
プランクは体幹トレーニングの基本種目ですが、腰が落ちてしまうと反り腰状態になり、腹筋が働かず腰椎が過伸展します。
この状態では、静的な姿勢でも腰部に負担がかかります。
▶️ 科学的根拠
研究では、不良姿勢のプランクでは腹横筋や多裂筋の活動が低下し、腰椎支持が弱くなることが明らかになっています(Ekstrom et al., 2007)。
▶️ 対処法
お尻を少し締めて骨盤をやや後傾させるようにし、肩・腰・かかとが一直線になる意識を持つ。鏡や動画で自分のフォームをチェックしましょう。
腰を壊さずに筋トレを続けるために
筋トレは正しく行えば、腰痛の予防にもつながる素晴らしい運動です。
しかし、フォームや身体の使い方を間違えると、逆に体を壊すリスクがあることも事実です。
腰は体幹の中心であり、負荷が集中しやすい部位。
だからこそ、“正しい知識”と“正しいフォーム”が必要不可欠です。
筆者は、医療現場で腰痛に悩む多くの患者と向き合ってきました。
さらにトレーナーとして、腰痛を抱える方々が安全に体を鍛えられる方法を指導しています。
「鍛えるつもりが、壊していた」ではもったいない。
これからも、安全で持続可能な筋トレライフをサポートするため、正しい情報を発信していきます。
参考文献
- McGill, S. M. (2007). Low Back Disorders: Evidence-Based Prevention and Rehabilitation.
- Axler, C. T., & McGill, S. M. (1997). Low back loads over a variety of abdominal exercises.
- Callaghan, J. P., & McGill, S. M. (2001). Intervertebral disc herniation: evidence for a cumulative loading mechanism.
- Ekstrom, R. A., Donatelli, R. A., & Carp, K. C. (2007). Electromyographic analysis of core trunk, hip, and thigh muscles during 9 rehabilitation exercises.