今週のオススメ本は、恋愛小説。
巷では高身長イケメンと、爽やか清純派女優の愛物語に批判が高まっていますが、この小説は更に上手をいく物語。
作者は有名な三島由紀夫。
小説の題名は・・・
愛の渇き
<嫉妬に狂う程、誰かを愛したい人にオススメ>
では早速作者紹介からいきましょう。
<作者紹介>
・三島 由紀夫
東京生まれ。本名、平岡公威。
東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。
最初の書き下ろし長編は「仮面の告白」。この作品を出した事により、作家としての地位を確立する。
その他代表作には「潮騒」「金閣寺」「サド侯爵夫人」などがある。
※潮騒のモデルとなった島は、三重県にある神島と言う島。歩いて一周出来るぐらい小さく、長閑で良い島です。三重からフェリーで30分程。
1970年11月25日、「豊饒の海」第4巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。
ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。
<あらすじ>
杉本悦子という1人の女。
彼女は結婚生活を共にしていた夫の度重なる女性問題に心を囚われていた。
夫は見せびらかすように浮気の痕跡を残す。時には他の女に買ってもらったネクタイを、悦子に巻かせることも・・・
痕跡を見せつけられた彼女の心は動揺し、彼はその動揺を楽しんでいる素振りさえある。
彼女の心に嫉妬と言う芽が育ってきた頃、夫は病気で急逝する。
これで嫉妬と言う毒の芽から逃れられる・・・。
夫が急逝すると、夫の父である弥吉に声をかけられ、半ば退廃的に、彼の別荘兼農園に身を寄せることになる。
彼女は間もなく弥吉と肉体関係に陥った。
彼の骨張った骸骨のような手で愛撫を受けながら、一方では同居人である三郎の若々しい肉体と素朴な心に惹かれていく。
もう誰かを愛し、嫉妬する苦しみから逃れられたと思っていたのに。
だが、三郎には女中の美代という恋人がいる事を知った時、悦子は・・・。
と言う話。
<感想>
悦子の感情の起伏、女性としての喜び、恥じらい、そして狂気。それらが、鮮やかな、香り立つような比喩を用いて書かれている。
また目を閉じると艶やかな悦子の姿、美代の素朴な田舎臭さ、三郎の逞しい腕まで浮かび上がってくる。
それらの表現の美しさだけでも十分楽しめるが、物語も読んでいて飽きさせない。
夫の女性問題に悩まされ、そんな日々から解放されても、愛していない骸骨のような手で愛撫される毎日。そんな中再び芽生えた恋愛感情。しかし恋が芽生えた相手には、恋人が。
揺れ動く悦子の心が、最後に何を選択するのか。悦子の最後の行動に共感を得る人もいるのかもしれない。
ただ男の僕としてはかなり恐怖を感じました。愛されると言うことも時にはリスクですね。
現実的だけど、非現実。そんな恋愛を体験したい人は、一度手にとってみてはどうでしょうか。
